
【概略】
アメリカ同時多発テロ後のアフガニスタン。父親がタリバンに逮捕された11歳の少女・パヴァーナは、髪を切って‘少年’となり、父親を救い出そうと決意するが…。
製作年:2017年
製作国:カナダ/アイルランド/ルクセンブルク
収録時間:93分
ジャンル:アニメーション
日本語吹替:あり
.0★★★☆☆
あの「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」のカートゥーン・サルーンが手掛けたアニメ。
女性のアフガニスタンでの生活の難儀さが、物凄く伝わってきました。
母親と通りを歩いているだけで杖で殴られたり、市場で追われて転んで鼻血がでたり…。「女は家から出るんじゃない!」と棒で殴られている女性たち。
パヴァーナは自分をかばったために父親が連行され、食べ物がなくなり、生活のため、髪の毛を切り市場へ出ます。女の子だけど男の子の格好をして。そこで学校の同級生で同じように男の子の変装をしている女の子と出会い、「いつ聞かれてもすぐ答えられるよう男の子の名前を考えていたほうがいい」とアドバイスされる。
オテシュ(炎という意味)と名乗ることにしたパヴァーナは、その子と協力してお金を貯め、賄賂を用意したり。でも刑務所の門番に返されてしまう…。
劇中物語が印象的。ゾウの王に種をとられた話。亡くなった兄スリマンの名を借りた勇敢な少年。
少し休みたいと思っても、地雷があるから壊れた戦車の上でしか休めないという事実。日本は幸い今はこのような暮らしではないけれど、あまりにも過酷な生活に、誰か(主に男性)に咎められないように生きなければならない、息苦しさを強く感じました。
父親を連行させたイキッたイドリースも、実際に銃を撃つとびびったりしてたよね。戦争に行くって事実にちょっとパニくってたとも思う。男性ですら、そういうある意味スリリングな日々を送るのに、その庇護下に置かれた(そうしなければならなかった)女性の生活は、どんなに苦しいか。
ついにパヴァーナは、道端での翻訳と読み書きの稼ぎで知り合いになった男性(妻が亡くなったという手紙を受け取った男性)に助けてもらい、戦争に使えない者は殺されるという騒然となった刑務所で、父親を取り戻す。
一方、親戚に今後の生活を助けてもらうため姉が嫁ぐことになった一家は、一刻も早くここを離れないとという親戚の迎えに来た男性に、「スリマンとパヴァーナの帰りを待たないと!!」と、亡くなった息子スリマンと娘パヴァーナを同一視し、断固とした決意をもった母親が、男性のナイフを血が出るほど握りしめ、「私を殺すか、帰るか」と迫る。結局、なんなんだバカらしいと去っていく親族の男性。
一応結末を迎える物語。でも、本当に解決したのか?と言えば、これからどうするんだろう、どうなるんだろうといった不安しか出てこない。
「怒りではなく、言葉を伝えて」というメッセージ性やストーリーはとても考えさせられるけれど、アニメ映画としては、ちょっと重たさが勝ったかな。救いがあまりないので…。男の子の格好をしている同級生の女の子が、海で商売をするという夢を語っていたけど、20年後、約束したように本当にまた出会えていればよいね。
コメント