サスペンス・スリラー

ジョーカー

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【概略】
「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。
スリラー

.0★★★★☆
映画館鑑賞。

主演はホアキン・フェニックス。共演にロバート・デ・ニーロ。

監督さんは、「ハングオーバー」シリーズの方らしいよ。このギャップ!

社会から、まさに怒涛の様に軽視され、疎外され、不幸の闇に捕まる男が、「ジョーカー」として堕ちていく姿を描いた作品。

なんていうかもう…主人公アーサーを演じたホアキンが凄い。
最初は気持ち悪いくらいにやせ細ったピエロの頼りない姿、そして後半ピエロの化粧に赤スーツに身を包んだ彼の姿は、言葉に出来ない格好良さがあった。震えた。

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あの階段ダンスとか、昼食のお好み焼きを食べた後の上映で眠くなってる私の目を、 カッと見開かせる衝撃力があったからね…。

もともと、序盤から一場面一場面のいわゆる画の力は凄かったので、絵になるなあ…でも顔がくしゃくしゃだなあ…と思いながら観てたのですが、 赤スーツ以降のシーンはもうまさにどのシーンも格好良い。アイテムでタバコが使われてましたが、嫌煙タイプの私も、確かになんか許せた。

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最終的にはアーサーが富裕層の男性3人を殺めた事件に感化された人々が暴力的な衝動に駆られて、政府や社会全体の格差への不満が爆発、不安が増大し、 実際に本作を見るため映画館に入る前に身体検査も行われたとかいう「感化された人々」の姿と、「社会への不満」要素が、まさにリアルに感じ取れる映画になっていました。

ただ、上映始まった初期に鑑賞された方たちが震えるように呟いていた「誰でもジョーカーになり得る。」っていうのは、 言っていることはわかるし、その部分は確かにあるだろうけれども、そこをメインにしちゃうとなんか違うなあとは思った。
だって、実際にはおそらく普通の人は、不安や無力感、絶望に押し潰されながらも、たまに希望や妄想もあったりして、それを抱えて生きていくしかないからさ。アーサーも同じでしょ?

でもアーサーは、確かに歪んだ母親のせいでああいう成長をしたのかもしれないけど、上辺をそのままなぞらえると、私怨を晴らしただけとも言えるので、バットマンの敵役としての悪のカリスマ「ジョーカー」になるわけではないと思う。
将来のジョーカーを生んだまさに道化…とか言っちゃうと、アーサーはやはりピエロに過ぎなかったのかってことになるんだけど、後半のアーサーの笑いは叫びに聞こえたし実際そう見えましたね。もうやめてあげて…の連鎖ですよ。

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ただ、中盤までは、皆がいうほどの熱量はさほど感じなかったの。でも後半を見た後だと…感想がガラッと変わるし難しい。
割と圧の強い映画で、しかもどこからアーサーの妄想?という部分もあって(そのまま納得してみれちゃう映画でもあるのですが)、最後には「精神病院」まで引き戻される。しかしなんにせよ、あの日、ブルース・ウェインの両親は殺されちゃうのだ。

アーサーに感情移入して観ちゃうのもアリだし、自分の妄想を膨らませるのもアリだと思う。そんな映画でした。

アーサーの、感情が高ぶると笑ってしまうという疾患の事も考えると、彼は本当に何も持っていない男で(母親の愛さえも)、彼には落ち度もないのに酷い出来事ばかりが起こるのだけれど、コメディアンになりたいという夢だけは本物だったのかな…とか思う。

デ・ニーロが扮する名司会者のもとで、変貌したアーサーが言う、一言一言がまたいいんだよなあ。ただ、7種類飲んでた抗精神薬を、突然断薬されたら…というのは、みな思う事なのでしょうかねー。

結果、なるほど…なるほど…と語彙力が死ぬ映画でした。

あと訳者がアンゼたかし(「マッドマックス 怒りのデスロード」もそうでしたね)。 ここでアンゼに出会うとは!ってエンドロール最後まで見て衝撃でした(笑)
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ジャンル: 映画
テーマ: 映画感想
( 最終更新日: 2019/12/06 Fri )
  • コメント: 12
  • トラックバック: 5
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コメント

  • fjk78dead
  • URL

不幸に浸ってたくなる映画でした。

>fjk78deadさん こちらにもありがとう。

ほんとですね!
これそうお話はそこまで衝撃的な話じゃないんだけど、
後半で一気にもっていかれる。
もちろんホアキンの演技が素晴らしいからです

  • メビウス
  • URL
同情派

makiさんこんばんわ♪

自分はアーサーに感情移入して観てた方でしたね。ジョーカーに変貌してからの行動の数々は勿論肯定は出来ませんけど、その変貌する要因でもあるゴッサムで彼にのしかかる理不尽の数々にはやはりどこか同情の念も持ってしまいました。
・・・でも最後まで観終るとその一連の出来事も妄想で片付けられちゃうのかなぁなんて思うと、それもまた複雑ですね--;

>メビウスさん こんばんは。

なるほど、感情移入…
私も感情移入できる系かなと思ってたのですが、
小児病棟に銃をもっていっちゃってたとか、3人撃つとか、
アーサーがまだジョーカーになってない段階での行動には、
いまひとつ感情移入はできませんでした。
その代わり、全ての不幸を受け切り、まさにジョーカーとして変貌したアーサーの姿には、畏怖と感動がありました。
でもこれ…やっぱり妄想なのかなーもやもやするっもう一回観るっ…ってなったら
映画としては成功な気がします(笑)

  • ヒロ之
  • URL
こんにちは!

なんていうか心揺さぶられる映画て、何故か感想を書く際に良い言葉が見付からなくなります。
兎に角、ホアキンの演技が絶品でした。
あれは流石に魅入っちゃう。
私も機会が(時間の余裕があれば)再見したい作品ですね。

To ヒロ之さん こんにちは。

とてもよくわかります。

ただ、だからこそ映画館で観たら…と
思ってしまいません?
映画館で観るべき映画とDVDでもいいやーな映画ってやっぱりあると思うんです
とか言いつつ私も5本1000円レンタル派なんですけどね

  • ヒロ之
  • URL
映画館

そりゃあ行きたいですよ。
昔(若い頃)は映画館派でしたし。
けど今はパニック障害と広場恐怖症を患っているので電車にも乗れない状態。
こういう精神的な病気持ちだと自分から大勢の人に飛び込むのは中々難しいです(^-^;
て、この事、makiさんにお話ししませんでしたっけ?(自立支援関係の事で)

To ヒロ之さん こんばんは!

以前、お話されてました^^ 私もちゃんと覚えてます。
私ももう10年精神疾患もってるし、同じ広場恐怖症とパニック障害もあるからです。
私も、JRに乗るのも、人込みも怖い…と思いつつも、3駅先の仕事場に通ってます。
医師にも、少しずつでいいので「引きこもり」ではなく「外出」を勧められてて、
(じゃないと、いつまでたってもずーーっと直りませんからね、わかってはいますが。)
毎回診察のたびに「どこにいきましたか?」と尋ねられてます。
大抵は映画です。映画にかこつけて練習みたいな感じです。
(おととしくらいから、映画館で観た感想が増えたのも、そういうことです)
多分映画とかパンとか好きな事じゃないと、勇気が出ないのもあります

ヒロ之さんも、人込み苦手…といいつつもゲーセンでUFOキャッチャーで景品とったりしてますもん
外出してゲーム売ったり買ったりしてるのでしょう?
少しずつ、少しずつですよ!

  • ヒロ之
  • URL
仰る通りですね。

覚えて下さっていて良かったです(^_^)
私も発病してから10年以上経ちますが、事前に薬を飲んでいれは、職場もそうですが、慣れた場所ならばだいぶ大丈夫になってます。
ただ予期せぬ事が起きた時が大変な状態にまだなるんですよね。
例えば、スーパーのレジが混んでた時とか。
逃げ場が無くなるので一気に気分が悪くなり顔が真っ青になってしまいます。
つい最近、実は車でも行ける映画館がちょっと遠い所にあるんですけど、担当医から勇気を持つ事が大事だと言われているので、思いきってそこまで行ったものの、入場を待つ人の多さに怖じ気ついて、そのまま帰ってきてしまいました。
その事を担当医に話したら、行こうと思ったその気持ちが大事だし、入れなくても、そこまで行けたのだから、今はそんな感じで良いんじゃないかな?と言って下さいました。
makiさんの言葉通りで、少しずつ前に進めば、何時かは映画館内にも入れるかもしれませんね。
私の担当医も同じく、引きこもるのは症状が改善しないよ、と言ってますから、休日昼間はなるべく外には出てます。
それがレンタル屋であったり、ゲーセンであったり。
その場合でも急に気分が悪くなる時がたまにありますが、大体が車で行っているので、一旦車の中に避難し、気持ちを落ち着かせてから再入店しています。
こうした行動を自分から起こし続ける事が大切ですよね。
ま、こんななりたくもなかった病気ですが、きちんと向き合って「少しずつ」努力していきます(^-^)
長文失礼しました。

To ヒロ之さん こんばんは。

そうそう、そうなんです。要は「慣れ」なんですよね。
私も札幌中心街の人込みものすっごい映画館は、ひとりでいくにはちょっと…とまだ思ってるし、そういう時には小樽築港の(札幌中心街に行くのと、JRが同じ金額)ガラーンとした映画館に行くようにしてます。
(「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」が中くらいのシアターに私ひとりだった、ってくらい人がいません/笑)
私も、入る入らないは別にして、まず行ってみる事が大事で、そういう勇気は必要、と医師に言われています。
何度も何度も行ってみて(入らなくてよい)、場合によっては信頼のおける人と一緒に入ってみる、という事も必要と感じました。
病気に理解のある友人がひとりいて、彼女がエスコート(例えば札幌駅まで迎えに来てくれる、送ってくれるなど)してくれたので、今は、前よりJRに乗っても心臓がバクバクしているとか、そういうのはない気がします。
勿論、人込みはいつも苦手です。そしていざという時の安心薬のような、精神安定剤は必須ですが。
私も同じく進んでなりたくはなかった病気ではありますが、その病気が(私は)治らないので、
ならば薬に頼ってでも、少しずつ「外出」に慣れて行けばいいなと思っています。
(家族と一緒なら安心なんですけどね…^;)
少しずつ、自分のテリトリーを広げていく。
ヒロ之さんも頑張ってらっしゃいます。
今はまだ勇気足りず…でも、続けていけば、いつかはいける!と信じましょう。
昔は映画館派だったのなら、絶対絶対大丈夫です。
応援と共感の長くなっちゃった返信でした。ごめんなさい。

  • 映画マン
  • URL
飛行機の中で見ました

あの爆笑必死の「ハングオーバー」シリーズの監督の作品とは思えないほどダークな作品でしたね。
バットマンの敵の誕生秘話なのでもっとアクション色が強いのかと思ってましたが、とても悲しい社会派ドラマでした。
先日「ダークナイト」で改めてジョーカーの姿を見ましたが、「ジョーカー」を見た後だと彼の見方が変わりますね。

映画マン さんへの返信

こんにちは。
素晴らしい作品でしたね。
とにかくホアキンの演技が凄い。
階段のシーンでは鳥肌がたちました
「ダークナイト」も観ておりますが、あれはあれでヒースの演技が凄いし、こちらはこちらでホアキンの演技が凄いし…って、
演技合戦になりそうなところ、タイプ(ジョーカーとしての)が違うというのが凄くよくわかる二人でもありました。

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