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マザー!

2018/03/31  16:10
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Mother.jpg
【概略】
ある郊外の一軒家に妊婦の妻と夫が住んでいた。ある夜、家に不審な訪問者が訪れる。夫はその訪問者を拒むこともせず招き入れる。それをきっかけに、見知らぬ訪問者が次々と現れ様々なトラブルを起こす。それと共に豹変し始める夫。そんな夫と訪問者たちに不信感と恐怖を募らせていく…。
スリラー

.0★★★★★
壮大なテーマを内包した奥深い作品になっています。要するに超問題作って事だ。物語の表面だけ見たら、なんじゃこりゃ、ですが、何を暗示しているのかというのが結構わかりやすく演出されている。特にこれはキリスト教圏では賛否あるでしょうねえ。
途中までは抑圧された妻の心理サスペンスなのかと思っていたのですが、中盤前くらいにアレって思い、あーそっかー、と理解した瞬間の面白さよ。膝打ちだよね。ただ最後までマザーの飲む黄色い液体の謎はわからずじまいでした。
新しい詩が書けずに苛立つ詩人の夫(ハビエル・バルデム)と家を補修して安らかな幸せを築こうとする妻(ジェニファー・ローレンス)。
まずここが、神(創造主)と母なる大地(マザー・アース)=妻なんですね。
家を突然訪れる男(エド・ハリス)はアダムであり、翌日現れるその妻(ミシェル・ファイファー)はイヴである事が、男の脇腹にある傷で、「アダムの肋骨からイヴが造られた」事を指している。その男と女は夫(神)が大事にしていた想像の根源・クリスタルを破壊し、家(楽園)から追い出される。禁断の果実を口にしたアダムとイヴの楽園追放ですね。
そこに現れる男と女の息子たちは遺産相続でもめていて、兄は可愛がられてる弟を殺してしまう。これは当然、カインとアベルによる人類最初の殺人の再現ですよね。
そして死んだ弟を弔うために、なぜかこの家で開かれる葬式で起こるキッチン水浸し=「ノアの方舟」であり、初めての夫との性行為で妊娠を予感した妻。
スランプを脱した夫(神)は新作(=新約聖書)を出版してそれが大ヒットし、多くのファン(信者)を獲得。押し寄せてきた群衆を妻の制止も聞かずに家へと招き入れてしまう。そして、ここで繰り広げられる騒々しい様々な暴力や迫害、破壊や争いは、当然人類史そのものであり、「家」を蹂躙していきます。
そんな中誕生した幼き神の子イエス・キリストは、堕落した人間たちによって首の骨をへし折られ、その血肉を貪り喰われてしまう。我が子を殺された挙句に罵られ顔を蹴られまくった(ここどうやって撮ったんだろう?)妻はついに怒り狂い、我が身もろとも愚かな人々を焼き尽くして、楽園となるはずだった「家」=地球は、滅亡するのでした。そして焼け跡から完全に無傷の夫が、焼け死ねず息も絶え絶えの妻を抱き、「君の愛が欲しい」と要求するのです。
新旧聖書をなぞることで、この家の中で起きた事がこれでだいたい理解出来る。
母なる大地(マザー)に対し人類が加える悪行の数々…。そう、これはキリスト教になぞらえた自然(地球)破壊映画だったのですね。ひとりの女性に対する虐待という形で描き出されたそれは、愚かな人類に対する警告、警鐘、そして真の姿を映し出す鏡。
夫(神)の描写も露骨でしょう。確かに、旧約聖書の神ヤハウェは容赦のない御業をしますが…。
さらに、ラストで焼け死に切れぬ妻から、愛=心臓を抜き出し(妻は灰と化す)新しいクリスタルを生成した夫は、新たな「家」、新たな「妻」、新たな「楽園」を創り出す…。
いま我々が存在している「地球」もまた、神の失敗例のひとつであることを、永遠に完成しない楽園=「家」を通じて、納得させようとしにきている。いやこれは…うん、まあ、納得してしまった。神は何度も何度でも創造してはやり直しをしているのかもしれない。その一瞬に私たちは生きているのかも。
穢れを知らない純真無垢の妻、マザー。神はマザーのその純粋無垢さを愛している。でも穢れてしまう。周囲の欲深き人々によって、マザー自身にも欲がある事に気づいていく。
壁に手を当てると、浮かび上がってくる「心臓」のイメージ。あれはマザーの心臓そのものだったんでしょうね。よく考えると、家が破壊されるたびに段々黒く変色してダメージを負っていっていたし。
一体神の求めている「愛」とは何だったのか。
ジェニファー・ローレンスは、びっくりするほど儚く美しく映されていて、とても良かったし、ハビエル・バルデムは相変わらず薄笑いの何を考えているのかわからない人物を演じてた。
生贄のように、不条理な虐待を受け続ける地球、そしてそれを行う人類。そろそろあれかもね、神の逆鱗に触れるかもね。
「すげえ映画じゃんこれ…」最後つぶやいちゃったもんね。悪意を感じるほどに胸糞悪い映画なんですよ。でも、傑作。
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コメント

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ヒロ之 2018/03/31 21:55

こんばんは!

コメント&TBありがとうございました。
これ、自分恥ずかしながら観ている間、さっぱり何を意味しているのか分からなかったんですよね。
ただただキャラがムカつくなあという気持ちだけで観てたような(笑)。
後でmorkohsonimapさんのブログ記事の考察を読ませて貰って、あ!なるほど!てやっと理解出来まして。
makiさんも実にきちんと内容を理解されていて、改めて私はこういう作品に弱いなあと思いました。
意味が分かると確かに、凄い!面白い!という作品はありますよね。
これもその部類に入るかもしれません。
しかし、何故この作品、日本での公開が中止になっちゃたのかなあてのが一番謎でして。
新旧聖書をモチーフにしたテーマが日本向けじゃないと判断されたのでしょうか。
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maki 2018/04/01 08:28

>ヒロ之さん おはようございます。

途中で気づくのは勿論ですが、途中ではわからなくても、
ラストで真相がわかるようになっていましたよ。
説明不足という事はなかったです。
だからこそ、本国ではブーイングの嵐が起きたのでしょうし。
テーマというよりは、アンチ・キリスト教のような数々の描写が
良くなかったのかもしれませんね。
生まれたばかりの子供は食べられてしまいますし。
でも、映画館でみてみたかった作品かなとも。

ラストのホゥ…と死に絶えるマザーの灰化映像も良く出来てましたが、
私がやはり驚いたのは、ぼこぼこに蹴られまくるジェニファーの図でしたねえ
なんか、正解を導かないとジェニファーが酷い目にあいますけど良いですか?と
常に圧迫を受け続けてるような映画でした。
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pu-ko 2018/04/05 14:10

なるほど~。奥が深い。
新約聖書くらい知らないと太刀打ちできない映画だったんですね。
勉強になりました。

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maki 2018/04/05 15:06

>pu-koさん こんにちは。

あとからよく考えるとわかりやすく提示されてはいたけれども、
ラストのほうであえて明かされる事で、序盤のアレは…アレは…とすらすら解けていくという、面白い作品でした
新約聖書というよりは、旧約聖書がほとんどかな(新約聖書はイエス生誕前後のものなので)
旧約聖書は、読み物として普通に面白いですが、どこでも売ってるようなものでもないので(売ってるところでは売ってるけれども)むしろ知らないほうが普通かと思います。日常生活で旧約聖書のこと学ぶ機会なんてそうそうないですもの。
私は幼稚園がキリスト教系だったので、日曜学校とかも行っていて、
クリスマス会ではマリア様を演じたし(私の人生のハイライト;)
キリスト教というよりは宗教に興味があった中学生時代(中二病だ!笑)
主だった宗教の本を買いあさった事がありまして。
映画としては、昔の映画のタイトル忘れちゃいましたが、かなり男色女色、色欲スカトロありのインモラルな映画なんですが、それが観たい(パンフレットだけがなぜかうちにある)と今でも思ってます
残念ながらDVD化されておらず;ビデオも見かけないという…。
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ヒロ之 2018/04/05 19:47

こんばんは!
横から失礼します。

>昔の映画のタイトル忘れちゃいましたが、かなり男色女色、色欲スカトロありのインモラルな映画

これって、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『ソドムの市』ですか?
間違ってたらごめんなさい。
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maki 2018/04/05 20:17

>ヒロ之さん こんばんは

あっそうですそうです
今調べてみたら、DVD化されてるようですね
かなりの高値になっちゃてますけど^;
二度と観ることはかなわぬのか…がっくり。
悪趣味映画というより、もういきすぎててアートですよね。
食糞、美少年と美少女を集めての色々
最終的には手足切っちゃって人間だるまなんてのは…なかったんでしたっけ??
あれは永井豪の漫画か?
パンフレット探さないと 忘れちゃったなー!
子供の頃にパンフを見て異様に引き付けられた童の私(笑)
成長したらホラー好きになりました な 見本ですね
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latifa 2018/10/24 17:17

makiさん、再びのお邪魔です^^

うわー、とっても丁寧なレビューですね。
凄く解りやすくて、ふむふむ・・・って読ませて頂きました。
特にあのクリスタルについては、解らないまま、放置しちゃっていたので、
そうなのかー、って解りました。感謝です♪

>「別離」は、全く難しい映画じゃないですよ!
日本のドラマにもありそうな内容です。是非!
そうそう、「セールスマン」の監督さんです!

>家族関係の物語が多い監督さんなのかな?
そう言われれば、そうです!
私、この監督さんの映画、意識してなかったんですが、そういえば殆ど全部見てるみたいです^^
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maki 2018/10/24 18:41

>latifaさん こんばんは。

こちらにもありがとう。
忘備録的な意味合いもブログにあるので、
感想というよりもあらすじを書くだけになっちゃう作品もたまーにあるんです^;
だめだよねー 精進します。
クリスタルは、命の源、創造の具現化かなと思ってます。

別離は難しいドラマじゃないんですか?
じゃあ見てみようかな・・・・
それに「セールスマン」の監督さんというのも、
ちょっとあの作品も理解不能なところがあったけど、
面白かったことは面白かったので、期待できますね!

latifaさんは、ヒューマン・ドラマを多く鑑賞されてるから、
そちら方面のこの監督作品を多くみているのかもしれませんね。
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ボー 2018/12/19 22:19

オウッ!

そうだったのかー!
いやはや、ぜんぜんわかりませんでした。
いわれてみると、ですね。
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maki 2018/12/21 12:55

>ボーさん こちらにもありがとう。

「家」というのもあっていると思います
ホームですから、人間におけるホームは地球、みたいな。

なかなか衝撃的な作品で、
面白く観た記憶があります

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