
【概略】
下水修理と空き巣稼業で妻子を養っていたソハは、ユダヤ人たちを地下に匿い、その見返りに金をせしめようと思い付くが…。
ドラマ
.0★★★★☆
1943年ナチス政権下のポーランド。迷路のように張り巡らされた地下水路にユダヤ人を匿った、1人の男の葛藤を描いた人間ドラマ。
下水修理工のソハは、空き巣をして小銭を稼いだりもしている姑息な人間。その彼が、ひょんなことから地下水道に繋がる穴を掘るユダヤ人の一団と遭遇し、ナチスに彼らを売り渡せば報奨金をもらえることは解っていたが、むしろそのユダヤ人たちからお金をせしめようと考え地下に匿ってやる代わりに多額の見返りを求めた。金を取るだけ取って通報はその後でも出来る、という算段だった。ウワゲスい!

しかしユダヤ人狩りが厳しくなるばかりの状況の中、そろそろ手を引こうと考えるが、時すでに遅く、彼らを見捨てられなくなってしまうのだった。
シンドラーのように高潔でもないソハが、次第に変わっていく様子が描かれています。マンホールの蓋を開け少女に「空」を見せてあげるシーンが印象的。始めはお金目当てだったソハが変貌していく。悲惨な状況を目にしてるうちに、いつしか彼の心に芽生えてくる感情や葛藤。

不衛生な下水網にわずかに広がる小さな空間で細々と命をつないでいる地下のユダヤ人たち、あまりにも儚い軽すぎる命の重みだ。
「ユダヤ人は命の値段まで値切るのか?」そういっていたソハが、極限状況で生き延びているユダヤ人たちの様子を見て、思わず言う「また支援する」という言葉。やむを得ず、ユダヤ人ムンデックを助けるために殺してしまったナチス。その報復として10名のポーランド人が殺され、その中にはソハの相棒もいた。事態はますます緊迫し切迫してくる。

ユダヤ人たちも純朴ではないし(むしろそれぞれ自分勝手)、地下で妊娠出産そして生まれた子を母親が窒息させ殺してしまったり、ユダヤ人たちが地下で弱っていく描写もキツイし…。容赦のない展開がリアルさを生んで、ゲンナリさせてくれると共に、ラストで迎える感動にすっかり心を掴まれました。
実際にあったことを基にしているそうなのですが、マンホールから伸びたあの手が彼らにとってどれ程眩しく希望に満ち溢れていたことか。ムンデックが収容所で入れ替わるシーンなど予想外にスリリングでいて、ラストは優しい余韻に包まれる。「仲間だ」じわじわと涙があふれてくるそんな作品でした。
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