
【概略】
「自分の部屋から奇妙な音がする」という読者からの手紙を受け取った小説家の女性が、そのマンションに秘められた過去の真相に迫っていく。
ホラー
.0★★★★☆
怪現象が起きるマンション敷地の過去を主人公たちが時を遡ってどんどん追っていくことで、隠された土地の因縁が明らかとなっていく…というストーリーなのですが、ホラーというよりはむしろミステリー?もっとガツンとホラーだと思ってたからちょっとその分肩透かしをくらいましたが、ラストのその後の「惨劇」を敢えて直接描かないところに後味の悪さを感じて、とてもいやな気持ちになる、そこは良い。
ただし、結局何に怖さを感じていいのかよくわからない部分があるのはマイナス。昔の「ほんとにあった!怖い話」を見ているような気分になる。
主人公「私」は小説家。ホラー雑誌に短編執筆していて、その関係で読者から恐怖体験や相談が送られてくる。その中の一通、「久保」の心霊相談に「私」は興味を引かれた。久保の住む岡谷マンション202号室、寝室として使っている和室から「箒(ほうき)で床を掃いているような音」がするという。「私」は久保とコンタクトをとり、怪奇現象の原因を調べていくが、次第に恐ろしいつながりが判明していく…。
遡っていく過程で、小井戸家、高野家、大正時代の資産家・吉兼家…そしてついには九州福岡県の奥山家へと到達する。それぞれの過程での怪異・異変は続いていた。
結末だけ見れば「私」にも久保にも致命的な不幸は起こっておらず、物語は「触穢」の震源地探しの物語だった、で済ますこともできるでしょう。
ただ、やっぱり想像してしまいませんか?ラスト後、「私」や久保らが呪いの被害にあっているのではないかと。あれだけのことを調べて、「私」や久保に「穢れ」が伝染していないと何故言えるのだろう?と。
様々な人物が「触穢」によって悲惨な目にあっています。中には命を落とした人も。彼らは特に何をしたわけではなく、ただ「穢れに伝染してしまった」だけの被害者。そして、その「穢れ」は今もなおどこかで広がり続けている。話しても祟られる、聞いても祟られる。まさに呪いですよね。
コメント