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ババドック 暗闇の魔物

2018/01/10  13:21
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【概略】
アメリアは毎夜、息子のサミュエルを寝かす際に本を読み聞かせている。ある日、サミュエルは彼女の知らない不気味な本を取り出して…。
製作年:2014年
製作国:オーストラリア
収録時間:84分
ジャンル:ホラー

.0★★★★★
シングルマザーと幼い息子の周囲で起き始める不気味な現象の数々。その原因は、謎の絵本にかけられた呪いか、幼い息子の心の闇か、それとも育児ノイローゼ気味の母親が抱いた妄想か…。

丁寧で繊細で不気味な映画だ。めちゃくちゃ好み!作品としても秀逸で、特に母親の変わりようが凄い。

夫に先立たれたシングルマザーのアメリアは、産気づき病院に向かう途中で事故にあい夫を失ったため、まだ幼い息子サミュエルをひとりで育てているが複雑な心境だった。いたずら癖の強いサミュエルは学校に通えないほどで、アメリアは手を焼かされていた。ある夜アメリアはサミュエルと家の書架にあった絵本「ミスター・ババドック」を読むが、物語が途中までしかない上、不吉な内容だったのでアメリアは絵本を破り捨てる。後日、アメリアとサミュエルの家の前に何者かが絵本を置くが、絵本には恐ろしい続きがあった…。

このミスター・ババドックの絵本の不気味さがとかく良い。実際に発売されるそうだけれども、この絵本の絵とか動きとか個人的にすごく好みなので一冊欲しいくらい。

ちなみに本の続きは未来を予想したようなもので、愛犬を絞め殺し、次は息子、最後は自分を殺すだろうというような不気味な内容。加えてこの絵本、一度でも「ババドック」の本当の姿を知ったものは、死を欲してやまなくなる…。と描かれている。

息子サミュエルは、普通に遊ぶには危険なおもちゃを作って装備したがる。自作のボウガンやミニ投擲とか、おまえは「ホーム・アローン」シリーズの主人公かと思ってしまうほど。母親は今は介護センターで働いているが、7年前の事故以来悪夢を見ていて睡眠不足の上、息子の育児疲れもあって精神が疲弊している。このママが後半かなり怖い。息子の誕生日は夫の命日。産んだその日から、息子への憎しみが始まってしまった、本人は自覚していなくても。

基本、この母子家庭メインで話は進み、「ババドック」という絵本を読んだその後、気味が悪い&息子がめちゃくちゃ怖がるように。何かにつけて「ババドックが来る」と言うようになる。学校でもいたずらが過ぎて退学処分になり、心労で倒れそうなアメリア。確かに7歳頃って感受性豊かで繊細でこだわりが強いというやっかいなお年頃。特にこのサミュエルにいたっては奇声を上げたりADHD気味で情緒に少々問題あり。

アメリアは大変なので色々と妹に助けてもらってるのですが、サミュエルが妹の娘に大怪我をさせたことから妹からも半絶縁状態に追い込まれ、欲求不満から自慰しようとすれば「ババドックが来やがります」と部屋にサミュエルが飛び込んでくるという始末。

「ババドックなんていないのよ」「いるもん、いるもん!ギャーーー!!!」

どんどん病んでいくアメリア。不眠が続き、とうとう息子にも一服盛ります。「ミスター・ババドック」という絵本の侵入で、危うい母親の精神のバランスが崩れていく。恐ろしい描写もあるこたあるが、ほぼ目撃者は母親だけなので、精神的な妄想では、と解釈できるところが鬱だ。

町中でチラチラ見えるババドックの黒い影、スープに入った硝子、不審電話、自動車の接触事故、ゴキブリの大量発生、など身近に思えるこれらの現実が母親を極限まで追い詰めていくのだ。息子だけではなく、いつの間にか母親もババドックに怯えるように。

恐ろしい話だけれども、普段は理性がきちんと働いている自分が、ある時ふと覗かせる自分に恐怖と不安を感じる時がある。狂気とは、あたりまえに暮らす自分と隣り合わせの存在であり、何も特別なことではないということを思うとさらに恐ろしさが増す。特に自分は今精神を患っていて、余計にそれを感じてしまう。少し前に一度、家族を皆殺しにしようと思いつめた時もあったので、今はそれで治療をしている、と思っている。

心が壊れてやがて人が人でなくなる狂気と呼べるものは、それは言いようもない嫌な気分だ。そんな狂気が別の良くないものを招いたり、時として「あるはずのないものがまるでそこにあるかのような」存在感をもって生まれでてしまうことすらあるのかもしれない…。人のそんな心の恐ろしさの一端を自分自身も感じたことがあるからこそ、本作を見ながら、彼女が堕ちてゆく様子を本当に恐ろしく眺めることとなりました。

母親が息子を口汚く罵り叱り飛ばすようになります。人はなんと脆い生き物なのでしょうか。彼女の眼には「存在するはずのないもの」が見えていた。存在を知ってしまった彼女はもう以前のようには戻れない。「居る」と知って(信じて)しまったのだから。

ババドックは「存在を否定すればするほどその力は強大になる」らしく、その通り最初からババドックを恐れていた息子は素早く臨戦態勢に入り、つまりババドックは母親を狙うわけである。母親は恐怖の存在となりババドックと戦うことになるのは息子である。息子VS母親の構図へと変わって行くのだ。

ババドックを己の中に宿してしまった母親の戦いが何より悲しみに溢れていて壮絶だ。誰よりも愛しているはずの息子を疎ましく感じ実際に襲い掛かる衝撃。己の異変を自覚しながらも抵抗出来ない抗えない。投げかける心無い言葉。母親を演じるエシー・デイヴィスの迫力ある演技は絶対に一見の価値がある。人間本当に怖い時は悲鳴じゃなくって低い呻くような不気味な声しか出ないというのがリアルでもあった。また猿のように体全体を使ってドアをぶっ飛ばすのも妙な迫力が。

そんな母親の変貌を目のあたりにしている息子。それでも母親を愛することをやめない息子の愛というのがなんとも切ないではないか。結局はその姿を目にした母性が勝り、嘔吐するように口から黒い液体のようなものが流れ出る。

深い絶望をみせられたあと、「負けるもんか。私は負けない!」更に親子二人における「ンガァーーーーーー!!!」という叫び声攻撃でババドックは地下室に逃げて行きました。

魔物の正体。母親が生んだ彼女そのものとも、父親への歪んだ思いが実体化したものとも、何とでも思える。しかし母親は魔物の正体を知っているように思えてならない。だからこそ彼女は、魔物との共存を選んだのかもしれない。前者ではないかと私は思う。

ラストは初めてサミュエルの誕生日を祝う事が出来るようになるという幸せな日常のひとコマ。しかし、地下室のそれを餌付けしているように、決してミラクルハッピーエンドとはならないのである。
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