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父、帰る

2018/01/10  13:54
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【概略】
母とささやかに暮らしていた二人の兄弟のもとに、12年間家を出ていた父親が帰ってくる。そして父親は二人を連れて旅に出るが…。
ドラマ



.5★★★★☆
母と祖母とささやかに暮らしていたふたりの兄弟のもとに、家を出ていた父が12年ぶりに帰ってきた。写真でしか見たことのない父の突然の出現に兄弟の思いは様々に揺れ動きとまどうが、父は無口で何の説明もしない。そして父は、ふたりを湖への小旅行に誘う。それは父子水入らずの初めての旅だった。「今まで何をしていたんだ」。「どうして何も語らないんだ」。「いったいあんたは何者なんだ」。「なんで今さら、帰ってきたんだ」。兄弟の不信感が爆発したとき、旅は思わぬ形で終わりを告げる…。

12年ぶりに「帰ってきた」父は、息子にも私たちにも最後まで謎だらけと言ってよいと思う。いったい、12年間、どこで何をしていたのか。刑務所にいたのか。放浪か。それすらも謎である。そして母が抱く思いもわからず仕舞い。それでも、夫が息子たちをつれて「明日から旅に出る」と言ってもそれを拒まないのだから、少なくとも子供たちに危害を加えるような夫ではないのだと暗に感じさせる。逞しい体に寡黙で、不器用。息子たちを強引に連れまわす。

レストランでの会計の仕方、ぬかるみにはまった車の動かし方などなど。父は言葉ではなく行動で示していく。しかし兄弟はまだ幼く、父に好意的で自分への関心を喜んでいる兄とは違い、弟のほうはまだ父の無言の行動を理解することはできない。だから、父の存在への憎しみばかりが大きくなっていく。あんたは誰なんだ、と言う気持ちが強いのだ。「なんで帰ってきたんだ!」と激しくなじる弟。

三人は、浜に捨てられたボートで島に渡り、父はそこで隠していた何かを掘りだしたが、子供たちはそれを知らない。

そして弟が「ここから飛び降りてやる!」と叫ぶのを助けようとして…父は搭から墜落死した。ここで気の弱かった兄の存在が急に大きくなる。二人が父の遺体を舟で運んで帰るが、舟は荷物を運んでるうちに遺体と共に流されてしまった。「パパ!パパ!」初めて心から「パパ」と呼べた瞬間だったが、無常にも父の遺体は沈没する。二人は車の中に三人が映った写真を発見する。父親の愛情に触れたと感じる瞬間だった。

無骨で寡黙な届かぬ父の想いが切ない話でしたけれども、その教えは息子達の中に生きていて、遺体を運ぶシーンだとかにも使われていた。家族として、父として、もう一度やり直すんだ─。そんな思いがつまった、写真。

父は焦りすぎた。性急に威厳を示そうとしすぎだったのだ。まず、抱きしめて、息子達の本能に愛情を伝えるべきだった。兄弟たちに感情移入してみてしまうけれども、見終わった後ではなぜか寡黙な父の愛の深さが心に残る作品になりました。ラストにたくさんの旅の途中での写真が写されますが、そこには父の姿はひとつもない。そして本当のラスト、兄と手をつなぎ幼い弟を抱っこする父の写真が一枚だけ挿入される。

作品は何も説明してくれません。吸い込まれるような美しい映像と父の叱咤と兄弟の心理描写だけが映ります。本作の撮影後、兄役の少年が水難事故で亡くなったと知って、悲しくなりました。
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